群馬漁業協同組合の管轄河川の多くは、赤城山南麓の小渓流や榛名山東麓の吉岡町や榛東村の河川などに位置しています。
この地域の中でも、人口が約30万人を超える前橋市が最も面積が広く、ここで生活する人々は、飲料水や農業用水、工業用水などを主に利根川や小河川の水に依存しています。
地球温暖化がニュースで報じられるようになって以来、群馬県や前橋市では様々な調査や取り組みが行われ、地域住民の身近な環境への関心を高める努力がなされています。
私たち群馬漁業協同組合も、水温や水質のモニタリング、地域の生態系の調査への協力など、地域に密着した活動を通じて、良好な河川環境と川辺の環境を次世代に受け継ぐことに努めています。
その一環として、ヤマメの稚魚放流を行っています。この取り組みを通じて、環境保護への関心を高めていただければ幸いです。
ヤマメの稚魚等放流式の様子
例年、3月下旬から4月上旬にかけて、敷島公園緑地の群馬漁協管理棟前で前橋市のヤマメ稚魚等放流事業の補助を受けて放流が行われています。放流されるのは、赤城山麓の養魚場で孵化後約半年間育てられたヤマメです。
事前にウェブサイトやブログで参加者を募集していますが、放流日は週末に限られるため、ご家族での行楽や部活動、クラブ活動が盛んな時期と重なります。そのため、参加費は無料としていますが、当日の集まりに不安を感じることもあります。
子供たちは、開会式の前に、水槽に入ったヤマメの稚魚や成魚、そして群馬の魚が印刷された下敷きなどに興味津々でした。
参加受付を終え、ライフジャケットを着用した後、開会式が始まりました。始めに安全に関する説明が行われました。小学生のお子さんや保育園・幼稚園児の参加者もいたため、保護者の方には放流時の留意点などが案内され、同時に組合員にも安全確保の再確認が行われました。
その後、ヤマメの生態や生活史、放流する利根川の環境についての解説が行われ、私たちが毎日利用している飲料水・農業・工業用水が安全であるためには、良好な河川環境と水質、川辺の生き物たちが暮し易い環境を維持出来るよう努める必要があると説明されました。
今回の放流イベントでは素敵なサプライズもありました。気がついたのは開会式直前でしたが、小川前橋市長がお越しになりました。
市長は水槽に入っているヤマメの稚魚や成魚の写真を撮られたり、放流時の注意点やヤマメに関すること、河川に関することなどを、参加されたご家族や子供達と一緒に聞いておられたのが印象的でした。
このイベントは、毎年前橋市の補助を活用して実現していますので、市長がご参加いただいたことに感謝しております。
(写真は、放流時に組合員からの説明を熱心に聞かれていた様子です。)
さて、今回のヤマメ等放流式では、参加者の皆様や組合員に向けて川の透明度に関する説明もありました。
群馬漁協協同組合では、適宜毎日の水温や川の情報を画像で発信していますが、本年度より透視度計を用いた濁り具合も測定し発信することになりました。
透視度計は、水道水や河川・海水などの透明度を測定するための機器です。透視度は、側面に目盛が刻まれた透明な管に測定する水を入れて、上部から覗きながら水を抜いていくと、あるところで底部に置いた標識板の二重十字がはっきりと識別できた時の目盛を測り、10mmを1度として表します。
測定の結果は適宜ブログ等で紹介しておりますので、釣行時の安全のため、魚の活性に対する判断材料としてご確認ください。また、海で成長し、大きなサクラマスとして戻ってくるために、モニタリングや情報発信を行ってまいります。
最後に、ヤマメの稚魚は、小さなバケツに分けて子供たちの手で優しく放流されました。受け取った稚魚を間近で見て嬉しそうな表情をする園児や、放流するときの真剣な眼差しで見送る姿など、普段遊漁用の放流を行っているのですが、子供たちからは何か新鮮な感覚を受け取ったようにも感じられました。
当日は天候も良く、穏やかな風と暖かな日差しに包まれて、川岸の柳もほのかに新緑が映えていました。放流したヤマメの中から、来春までに海に下る個体はどのくらい残るのでしょうか?
再来年の春、今日放流したヤマメたちが海で成長し、大きなサクラマスとして戻ってくるために、この環境を子供たちや地域の人々と守り伝えていきたいと思います。
放流の様子
その他の放流の様子
赤城南麓の河川、鏑木川で行われた園児たちによる放流の様子です。
こども釣り教室の様子
敷島公園内にある群馬漁業協同組合の管理する釣り堀池で行われたこども釣り教室の様子です。